Global Link Singapore 2019(世界大会)報告

謹啓 酷暑の候、ますます御清栄のこととお喜び申し上げます。また、平素より本校の教育につきまして一方ならぬ御指導、御支援を賜り、衷心より感謝申し上げます。さて、この度は本校科学部の「グローバル・リンク・シンガポール世界大会」への出場に際し、御支援をいただき誠にありがとうございました。
大会は、令和元年7月26日(金)から29日(月)まで、シンガポールの南洋工科大学キャンパスで開催され、これまでの取組と練習の成果を存分に発揮し、堂々とした研究発表を行うことができました。
残念ながら賞をいただくことはできませんでしたが、各国代表の質の高い研究内容とプレゼンテーション力、英語力に直に接し、新たな課題や目標を見つけるなど、次につながる貴重な経験を積むことができました。
また、同大会内で開催されたポスターセッションでは、参加した1・2年生4人が、他国の参加者に積極的にコミュニケーションを取り、研究内容を伝え共同研究を呼びかけることができました。
さらに、参加者交流の場である前夜祭においては、日本を代表してハイヤ節を披露するなど文化の発信にも努めたところです。
大会参加を通して、生徒達は大きく成長するとともに研究に対する意欲が一層高まりました。学校としても大きな一歩を踏み出すことができたと考えております。
これも偏に皆様方の御支援の賜であり、心より感謝申し上げます。今後とも、本校の教育活動について、御支援を賜りますようお願い申し上げます。
まずは、略儀ながら書中をもってお礼を申し上げます。                  謹言

令和元年7月31日                       熊本県立天草高等学校 校長 平田 浩一

グローバル・リンク・シンガポール 2019 世界大会出場報告 

既報のように天草高等学校科学部は、今年3月開催の「つくば Science Edge」において「探究指向賞」を受賞し、日本代表のひとつに選ばれました。
そして7月26日からの「グローバル・リンク・シンガポール 2019」に出場することになりました。
同窓会としては、代表の二人が力いっぱい表現できるようにと、母校から応援団を送りたいと、全国の卒業生に支援を呼びかけました。目標の募金額は達成しましたが、学校の教育方針で、一般参加ができるポスターセッションに1・2年生4人をおくることになりました。これは素晴らしい英断でした。
国際的な視野を培い、しかも自分で体験できることは素晴らしいことで、代表二人以外にもその機会がもらえたのです。周りに広げる役割を担ってくれるでしょう。
グローバル・リンク・シンガポールはオーラルセッション(各指定大会の入賞者より選抜)とポスターセッション(推薦及び事前審査なしの一般参加・特別枠)があります。

選抜された天草高校科学部3年生の山下鮎人くん、古田詩乃さんの研究テーマは「50年後の熊本は…。~珪藻(けいそう)・花粉分析からの海水準変動予測~」で、上天草市で採取された地盤掘削の土壌で試料をつくり、気温や降水量など気候変動を推測できる花粉と、海水準を示す珪藻を分析した結果、0.73度~2.1度の気温上昇が予測される50年後の海面の高さが現在より12.2センチ~34.7センチ上昇を予測。2人の研究は、天草にある7.700年前の地層から花粉と珪藻の化石を取り出し分析、世界の気温が2.5度上がると言われる50年後の天草の海面の変動を予測する研究です。

7月26日(金)、無事にシンガポールに到着。午後にはポスターセッションの強行軍でしたが、4人のチームワークと天高生らしさで頑張りました。
翌日、グローバル・リンク・シンガポール本番であるオーラルセッションが始まりました。代表二人の発表は堂々としていて、練習以上のプレゼンテーションができました。受賞にはいたりませんでしたが自分たちの研究成果を世界に発信することができました。同時に、世界中の高校生が真剣に研究していることや、研究レベルの高さ学ぶことができました。

彼らの今回の体験は高校生活として最高で、生涯記憶に残り続ける経験で、世界観が変わるくらいの出来事を自らの手でつかみ取ったといえましょう。そのために同窓会の応援が一助になってくれたのなら素晴らしいことです。図南会本部や各地区図南会の呼び掛けに応えてご寄附を寄せてくださった皆さんありがとうございました。今後とも後輩たちの応援をよろしくお願いします。

私たちの誇りでもある、後輩たちから感想の文章を寄せてもらっていますので紹介します。この感想文は天草高校の歴史的な記録文書でもあります。

山下 鮎人くん(科学部 部長)
3月の下旬、僕たちはつくばScience Edge2019で受賞し、世界大会出場という目標を達成し、新たな舞台へ挑戦することになりました。僕は海外に行くことに少し抵抗があり、さらには初めての英語での発表ということもあり、受賞の嬉しさと同時に不安がこみ上げてきました。
シンガポールに行くことが決まった後は、部活動はさらにハードになり土日もほとんど活動していました。研究中にはデータのミスなども多々あり、古田さんと二人でどうにかこうにかデータを集め、考察し、研究(発表内容)を完成させました。
しかし、これだけではなく研究が終わったら自分たちで英語の原稿を作り、英語科の先生に添削してもらい、ひたすら練習をしました。初めは、添削してもらった原稿を見てこんなに長い文章を本当に言えるようになるのかという不安がありました。
練習開始当初は、いろいろな人たちから指導を受けて心が折れそうになったこともたくさんありました。でもやるしかないと腹をくくってがむしゃらに練習しました。家でも、学校の休み時間中にもずっと練習していました。
そして、東京工業大学(※宮﨑注釈:GLS参加者への東工大でのプレゼン体験会のことです)で初めて大勢の人の前で発表しました。発表直前はものすごく緊張しました。でも、その日の最後に東工大の先生方に今日の中では1番よかったと言ってもらい、とても嬉しく、さらにやる気が出てきました。
そのままの調子で行けばよかったのですが、本番の数日前に発表スライドにミスが見つかり、自分のパートの原稿が変わってしまいました。出発の直前までは変更した部分もある程度は言えていたのですが、本番直前のリハーサルでは、緊張と前日からの長時間の移動で練習できなかったこともあり、自分でも驚くほど言えなくなってしまいました。そして先生からは今日のリハーサルは100点満点中2点だと言われて本当に本当に悔しかったです。古田さんはしっかり言えていて、自分のせいで厳しい指導を受けてしまい、本当に申し訳なかったです。その日の夜は、ひたすら練習しました。
本番当日、多少の緊張はありましたが、今まで練習してきたことを信じ、発表しました。悔いがまったく無いわけではないですが、自分の力をしっかり出し、リハーサルのときよりも断然良い発表ができたので良かったです
残念ながら賞をもらうことはできませんでしたが、多くのことを学ぶことができました。この学びを自分たちの今後に生かし、そして、後輩たちには自分たちが果たすことができなかった世界大会での受賞を目指して頑張ってもらいたいです。
また、最後にはなりますが、このような大きな大会に出場できたのも同窓会の方々のたくさんのご支援のおかげです。このような形ではございますが、この場を借りてお礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。(※注釈:科学部顧問・宮崎 一先生)

古田 詩乃さん
私は7月26日から28日にかけて行われた「Global Rink Singapore」にオーラルプレゼンテーションで参加しました。
1日目は、リハーサルがありました。実際のステージに立ってみると、いつも練習している教室とは規模も、雰囲気も違い、思うように言葉が出ず、リハーサルの出来はいいとは言えませんでした。リハーサル後、「明日の本番はこれではだめだ。」と思い、山下君と2人で反省点を挙げ、それぞれの発表部分を必死に練習をしました。その後、夕食後に「ハイヤ踊り」をステージで踊りました。はじめは緊張しましたが、参加者の方全員に手拍子をしてもらい、踊っている私たちを見て、ニコニコしながら楽しそうにしている参加者の方々の様子を見て、踊りながら自然と笑顔になりました。夜のホテルでも山下君と明日の本番に向け、何度も動きの確認をし、練習をしました。
2日目はオーラルセッションがありました。海外の参加校、日本からの参加校の英語の発表を聞きました。特に他校の質疑応答には世界レベルのハードルの高さを感じました。本番前の最後確認を会場の外で行い、本番に臨みました。いざ発表の番になるととても緊張し、「本番中に話す内容が飛んでしまったらどうしよう」と不安になりました。本番では「いつも通りに」を意識して、自然なプレゼンテーションを心掛けました。一番の不安であった質疑応答は事前に英語科の先生に協力していただき、練習した甲斐もあって、時間はかかりましたが答えることが出来ました。海外参加校の発表を見て感じたことは、「海外の人たちも私たちと同じなんだ」ということです。抜群にプレゼンが上手かったり、英語が流暢なわけではないということが分かり、「海外」という世界を以前より近くに感じました。残念ながら受賞することはできず、とても悔しく思うと同時に世界のレベルに対して「自分はまだまだだな」と強く感じました。
3日目には基調講演がありました。海外で働く海外の方のグローバルな課題についての講演を英語で聞きました。プレゼンテーションやスライドの作り方など、勉強になる点がたくさんあり、グローバルな課題に対する関心がより深まる内容もとても興味深く、おもしろかったです。実際に海外で働いている方のお話を聞けたことで将来「自分も将来海外で働きたい」という思いが一層強くなりました。
今回、私たちがGLSに参加することができたのは、寄付金をくださった方々、いつも応援してくださっている同窓会の方々、地域の方々のおかげです。日本では経験できないような貴重な経験をたくさんすることが出来ました。温かいご支援と応援、本当にありがとうございました。支えてくださった皆様に心から感謝申し上げます。

伊藤 才華さん
私は7月末世界大会に参加させていただき、ポスター発表を担当しました。この世界大会を通して学んだことはたくさんありましたが、特に学んだのは英語とプレゼン能力の重要性でした。まず、英語についてです。今回は世界大会ということで、ポスターは全て英語で書き、発表も全て英語で話さなければなりませんでした。英語の単語、イントネーション、発音など英語の先生を中心にご指導をいただき練習を積み重ねました。しかし世界大会で実際に発表してみて、自分たちの研究を理解してもらうにはもっと英語能力を高めるべきだと身をもって痛感しました。自分が発表する英語の文章は暗唱できても、相手が質問してくる内容や言葉は初めからわかりません。だからこそ英語のリスニング能力やスピーキング能力がもっと必要になると感じました。
次に学んだのはプレゼン能力についてです。今回ポスター発表をしたのは4人でした。個性を出すために各個人が発表する表現を考え、資料を作りました。私はプレパラートを作る動画を作ったり、シンガポールに咲いている花の花粉の写真などの準備をしたりしました。グラフや縮小版ポスターをラミネートするなどの工夫もがんばりました。「ポスターをどれだけ多くの人に見てもらえるか」「どれだけ分かりやすく伝えられるか」など、悩むこともたくさんありました。いざ、人に発表してみるとなかなか伝わらず苦労することもありました。しかし聞いてもらった人にアドバイスをもらうことで、さらに発表能力をあげることができました。世界大会でも学んだプレゼン能力を次の大会でも活用していきたいです。他にもシンガポールで同じ班になった海外の人と友達になることができたり、海外の料理を食べたり、異文化交流も出来ました。またフェアウェルパーティーではハイヤを披露しました。踊っている最中でも観客の方が手拍子をして下さり、大いに盛り上がりました。シンガポールでは本当に貴重な体験をさせていただきました。今回賞をいただくことはできませんでしたが、この場で学んだことを次の大会に繋げていきたいです。そして来年は世界大会で賞が取れるように先輩たちの研究を引き継ぎ、日々の研究をがんばっていきます。この世界大会でご支援をしてくださったみなさん本当にありがとうございました。

最後に科学部顧問の宮崎 一先生から「大会概要」として報告をいただいていますので、締めくくりとして紹介します。

Global・Link・Singapore2019(以下、GLS)は7月26〜28日の3日間行われました。オーラルプレゼンテーション部門では、日本から社会科学分野に1校、自然科学分野に本校も含め5校が発表しました。
本番では、古田さんが持ち前の高い表現力を生かし、地球温暖化による海面上昇について聴衆に訴える問題提起を行いました。山下くんは科学部の研究成果を淡々とした口調でありながら、わかりやすく伝えました。質疑応答では、予想外の質問ながらも2人で協力しながら答える様子が、本校のチームワークの良さを表していました。
育成枠で参加した2年生3名と1年生1名は、海外に自分たちの研究手法を広めて仲間を増やすために、不慣れな英語ながらも積極的に発表していました。
残念ながら受賞には至りませんでしたが、これは偏に顧問である私の責任であり、生徒たちは精一杯、持てる力以上の発表を行ってくれました。私も含めて多くの学びを得たGLSでしたが、最大の成果は、先輩たちの姿に感銘を受けた2年生が「次は私たちが世界を目指す。」と言ってくれたことです。現在の大学1年生の代から始めた研究ですが、着実に次の代へとバトンが渡されていることがわかり、感動いたしました。次は、この2年生たちと3年生が残してくれたものを生かし、頑張っていきます。
GLSへの参加に際しましては、多くの方々からのご支援を頂きました。このご支援により、次の代に繋がり、生徒共々大変感謝しております。誠にありがとうございました。

 

 

 

Global Link Singapore 2019(世界大会)報告” に対して3件のコメントがあります。

  1. 本島 昭男 より:

    天高生の頑張りに感動します。
    卒業生も負けずに頑張りましょう!

  2. 山中良三郎 より:

    ハイヤ踊りを、世界に披露してきたとは

    天草高校生は 偉い!すごい!

  3. 天草高校SSH研究主任 井上博登 より:

    天草高校SSHは『サイエンスの宝島 天草から世界へ』という目標を掲げています。
    今回の科学部の活躍は、天草を研究した成果が世界の課題解決に役立つことを示してくれました。
    研究を次世代につなげるために、育成枠として参加した生徒も多くの学びを得たようです。
    これも、御寄付頂いた全国の同窓生の方々のおかげです。
    本当に、ありがとうございました。

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